赤いクチビル

前からとぼとぼと歩いてくる人影は

老婆のような感じだが　よく見ると背の低い男のようである

胸の前に何かを抱えている

両手で大事そうに持っているその物体は

ふさふさの毛を蓄え　まるで人間の頭のような・・・

・・・　生首？・・・女の


このまま　ただすれ違っていいものなのか

だが　その男は歩く調子を変えることなく

こちらの右脇を通り過ぎようとしている

「あっ」　と　小さな悲鳴を飲み込んでその首を覗き込むと

まるで生気の無い持ち主の男とは対照的に

かっと見開いた両目は真っ直ぐと前を見据え

その赤いクチビルは濡れ濡れとしていて　何かを言いたげだ、、、






おどろかすんじゃねぇー！！


多分

美容師の卵か？

マネキンの首は教材か何か？



駅の改札を出て　いきなりの光景



普通さ　そんなものは袋に入れるとかさ



受け狙いの遊び心があったかもしれない　（はまったけど・・・）



でも


薄笑いを浮かべたあの赤いクチビル


夢に出てきそうだ、、、　　　。